10月31日、ティク・ナット・ハン師がパーチェム・イン・テリス(地上の平和)賞を受賞します。ローマ法王の回勅を記念して設立されたこの賞は、世界平和と正義のために貢献した人物を賛えるために贈られ、過去にはキング牧師やマザー・テレサらが受賞

 

 

 ~以下ニュース記事要訳~


共に平和と非暴力の実現を目指し、固い絆で結ばれたキング牧師がこの賞を受賞して50年目の今年、社会参画仏教と西洋でのマインドフルネス・ムーブメントの父として広く知られるティク・ナット・ハン師の受賞が決まった。ノーベル平和賞をも受賞したキング牧師は、後にティク・ナット・ハン師を「平和と非暴力の使徒」として推挙、ティク・ナット・ハン師はノーベル平和賞候補ともなった。


自国ベトナムでの長きにわたる戦争に深く心を痛め、仏教徒たちが「僧院の中に留まり、黙想して生きることに忠実であるべきか、周りで苦しみにあえぐ人々を救うべきか」の決断を迫られた時代、ティク・ナット・ハン師は、仏の教えの第一の聖なる真実 『苦諦』 を「仏教の実践者として、苦しみを和らげるためには、時代の苦しみを直接担う必要がある」と結論付ける。


危険を冒し、戦争と洪水に苦しむ人々に船で食料を運び、ボート・ピープルの救済、停戦をもたらすために奔走。その後、青年社会奉仕学校を設立、戦争で破壊された村々を再建。その後も出家者・在家者がともに学ぶマインドフルネス修練のためのセンターを造った。

 

南北の両政府に和平を呼びかけ、パリ平和会議で仏教平和使節団を代表、4年後の終戦合意(パリ協定)にこぎつけた。

 

和平のための活動が活発をきわめると同時に、暗殺が企てられ、フランスへの亡命を余儀なくされた。以降、自らの亡命生活を “西洋と東洋の政治的・精神的な和解への挑戦” と位置づけ、個人と社会を一体とみなし、その共通の福利を目指して、内的な変容をもたらすことに人生を捧げた。

 

 

 

  ティク・ナット・ハン師によると、

 

『内面的な変容とは、*マインドフルネスのエネルギーを解き放つことに始まる。

 

 

マインドフルネスを支えるのは、吸う息と吐く息の奇跡への一瞬一瞬の気づき。

 

 

マインドフルな呼吸・歩み・食事は、心を開き、思考の中枢を開放することのできる扉となる。

 

 

マインドフルネスの実践は、自己への理解と許しをはぐくみ、敵対する相手や地球をも含むあらゆる存在への傾聴と慈愛の行動を生み出す。

 

 

マインドフルネスはコミュニティ(共同体)として実せんされるとき、最も真価をあらわす。』

 

 

 *マインドフルネス…健全な気づき、正念

 

 

1982年、プラムヴィレッジ設立。その後四つの僧院へと拡大、更にベトナムに二つ、アメリカに三つの僧院を構える。在家の人々が実践仏教の技術を学び、発達させる場所として機能している。ここでは慈愛を実行する教えを、傾聴をもって現実のものとしている。

 

その後も病で倒れるまで精力的に各地を巡り、人種差別の解決、ベトナム戦争の傷跡を癒すなど恒久的な世界平和のために尽力。最近では世界の奴隷問題と人身売買の収束を目指す会議に僧侶団を派遣。

 

「フランスの私の庵の祭壇にはブッダとキリストの像が隣り合って並んでいます。線香に火を灯すたび、自らの精神的な先祖として、私は両者に触れるのです。 」(2013)

 

 

 

(The Catholic Messenger 10月22日付 “Thich Nhat Hanh named Pacem in Terris winner~Zen Master known for bridging Eastern and Western spirituality” by Katie Kiley/要訳・訳注 心慈覚)

 


 

 


10月31日、マーチン・エイモス司教からの受賞の様子。サンフランシスコのディア・パーク寺院にて120人のブラザー・シスターと500人のリトリート参加者が見守る中、療養中のタイに代わり、タイ・ファプ・ダン、シスター・チャン・コンが受け取った。